2010年9月8日水曜日

父へのプレゼント

先日、父が社長に就任した。

家でぐうたら過ごす父の姿しか見たことのない私にとっては、にわかには信じがたいことであったが、どうやら本当らしい。サラリーマンとしての父について、生まれてからこのかた一度も考えたことがなかったせいか、いろいろと考えさせられる事件であった。

私は将来的に、経営者か経営者を補佐する参謀のようなポジションに就きたいと学生の頃から考えていたが、まさか「小さい頃から当たり前のように身近に存在していた」父親がさっそうとそのようなポジションに就くとは夢想だにしなかった。

私の好きな本に「ビジョナリー・カンパニー②」というビジネス書(というより啓蒙書に近い)があるが、その中に「第五水準の経営者」という重要なキーワードが現れる。おそらくは多くの読者と同じように、「自分自身、第五水準の経営者としての資質を有しているだろうか?」と考えながら本書を読んだものだが、もしかしたら今後は「私の父は、第五水準の経営者としての資質を有しているだろうか?」と考えながら読んでしまうようにもなるのかもしれない。

前置きが長くなったが、ピラミッド構造を成す会社組織の頂点にのぼりつめた父に、何かお祝いのプレゼントを買おうかという気になった。思い返してみると、父に対して何かをプレゼントしたということは、おそらくは中学校入学以来、皆無に等しい(初任給でデジタルカメラをプレゼントしたが、あれは父へのプレゼントというより、「両親」に対してのプレゼントであった)。

何がプレゼントとして適切であろうかと悩み、会社の上司や先輩に相談し、当初は名刺入れか定期入れを候補に考えていた。しかしながら、いざ(私の住む都道府県唯一の)百貨店に足を運んでみても、目ぼしい名刺入れや定期入れが見つからなかった。大阪や神戸の百貨店に足を伸ばさなければならないなと考えながら店内をとぼとぼと歩いていたら、高級万年筆の販売コーナーが目に入る。万年筆。社長就任祝いとしてなかなかにして妥当かなと思った。それに、父は東京生まれ東京育ちという環境要因もあってか、万年筆(というより世界の文具ブランド)について一般以上の知識を持っている。私が中学生の頃だったか、「パーカーのシャープペンが安売りしていた」という理由で、私にパーカーのシャープペンを買ってきてくれたこともあった(中学生の私がパーカーなぞ知るはずも無く、またあまりにもシンプルすぎるそのデザインに馴染めず、結局はDrグリップを愛用していたのであるが)。

ペリカンのスーベレーン。パーカーのデュオフォールド。名作とされる高級万年筆も陳列されていたが、それら名作を購入するには私の予算は幾分足りなかった。見た目・作りが高品質で、値段も高すぎず、それでいて一般品よりも高いものはないものかと店員に相談したところ、「それならこちらの商品はどうでしょう?」と1本の万年筆を提示された。

パーカーの「プリミエ」という万年筆であった。パーカーを代表する普及品(といっても一般的な文具の価格感覚からすると高い)「ソネット」と、これまたパーカー(いや世界の万年筆)を代表する高級品「デュオフォールド」の中間に位置づけられる比較的最新の万年筆である。

実物の質感が非常に良く、私は迷わずこの「プリミエ」(下:画像)を選択した。


綺麗にラッピングしてもらい、父のもとへ送った。

後日、父からお礼の電話があったが、電話口の父は相変わらずいつもの父であった。

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