その人の名を「Marantz #7SE」と言う。
あの美しき「Marantz #7(マランツ セブン)」は1958年に世に現れた。多くの音楽愛好家を魅了し続けたセブンは、90年代末期に可能な限り忠実に「復元」され、復元版の最終ロットは「Marantz #7SE(Special Edition)」として放たれた。以後、現在に至るまでセブンは復元されていない(なお、セブンと双璧をなす、もう一人の美しい人「McIntosh C-22」は、3度復元されている)。
私は悩んだ。
美しきオリジナル「セブン」の模写である復元版を手に入れるべきか否かを。
2ヶ月ほど前に秋葉原で聴いた美しき声は、オリジナルのセブンから奏でられたものであった。私はその美しさを自分のものにしたかった。しかし、哀しいかな、オリジナルの相場価格は、私には手の出せないところにあった。よしんば初期投資費用を準備できたところで、登場から50年以上経過する個体の維持費を考慮すると、所有し続ける自信は私にはない。
けれども、復元版であれば、多少無理をすれば手に入る価格である。それに、オリジナルよりも個体としてはかなり新しい部類に入るため、「もろさ」に対する不安はそれほど抱えずに済む。
事前情報で、復元版は「オリジナルと“近い”美しさ」を有しているとのことは知っていた。逆に言えば、「オリジナルとの完全なる一致」は叶わなかったということだろう。
どうすべきか。
「ええい、ままよ!」
私は#7SEを購入する決断をした(#7Rではなく#7SEを選んだのは、RよりもSEのほうが配線が丁寧に施されているという情報があったこと、そしてRよりもSEのほうがやや新しいロットであることによる)。
そして、今日、彼女は私のもとへやってきた。
ウッド・ケースで着飾られたその人と、しばしの間、見つめあっていた。外見はあの美しき人とほとんど同一である。以前の所有者がほとんど飾り物として大切に扱っていたことから、その肌に傷・汚れ等はほとんど無い。
それから、静かにセッティングを始めた。
すべてのセッティングを済ませ、Zooey Deschanelの歌うレコードを用意する。
レコードにShure V15TypeⅢ(HE針)を乗せた。
その人は、私の眼前に、Zooey Deschanelを呼び寄せた。
その声は瑞々しく、そして生きていた。
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私のもとへ嫁いできたその人は、あの美しい人と、よく似ていた。
2011年2月25日金曜日
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